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【リーダーの真価】中越高校・本田監督の言葉に見る「組織の精神はトップから生まれる」

新潟県の高校野球県大会で、7年ぶりに甲子園出場を決めた中越高校。その歓喜の瞬間に、ひときわ胸を打たれたのは、本田監督の優勝後の談話でした。

「生徒たちが一丸となって、本当によく頑張ってくれた。
そして私たちは、ここ7年間、甲子園に出場できなかったOBの先輩方の気持ちも背負って、甲子園に挑みたい。」

この言葉に、リーダーとしての器の大きさ、誠実さ、そして組織への深い責任感が凝縮されています。現役の生徒たちへの労いだけでなく、過去の努力が報われなかった世代への敬意までを含むその姿勢に、私は深い感動と尊敬の念を覚えました。

なお、私の母校である北越高校も今大会では健闘しました。惜しくもあと一歩及びませんでしたが、毎年上位チームに食い込む力を持つ強豪校として、今後のさらなる飛躍に大いに期待しています。

「組織の精神はトップから生まれる」──ピーター・ドラッカーの警句

経営学の父、ピーター・F・ドラッカーはこう語っています。

「組織が偉大であるならば、トップが偉大だからである。
組織が腐るならば、それもトップが腐るからである。
木は梢(こずえ)から枯れる。」

つまり、どれだけ立派な制度や人材がいても、その組織の精神(Culture)はトップの姿勢次第であるというのです。ドラッカーはリーダーに最も必要な資質を「真摯さ(integrity)」と明言しています。能力や知識の不足は許されても、「誠実さの欠如」だけは許されない。リーダーの不真面目さは瞬時に組織に伝播し、やがて土台を崩してしまうと警告しました。

本田監督が示した「真摯さ」の力

本田監督の談話は、まさにこの「真摯さ」を体現していました。

  • 生徒一人ひとりの努力を正面から認めたこと。

  • 過去7年、甲子園を目指して敗れてきたOBたちの思いを忘れず語ったこと。

  • 「勝った現役」だけではなく、「報われなかった先輩」も含めて、チームとしての物語をつなげようとしたこと。

このような姿勢は、チームの精神を高め、組織に根を張らせるリーダーの振る舞いそのものです。生徒たちはその背中を見て、心から信頼を寄せるでしょう。たとえ技術が未熟でも、こうした精神が育つ場にこそ「本物の成長」があります。

私たちの組織はどうか?──リーダーとしての自問

学校でも、会社でも、家族でも──すべての集団は「小さな組織」です。そこに集う人々の姿勢や風土は、やはりリーダーの在り方に強く影響を受けます。

  • 言葉と行動が一致しているか。

  • 他者の貢献を公正に認めているか。

  • 責任を背負う姿勢を見せているか。

  • 部下や後輩の成長に本気で関心を持っているか。

これらの問いは、日々の仕事や人間関係の中で、私たち自身にも向けられるべきものです。

最後に──「木は梢から枯れる」を胸に

「木は梢(こずえ)から枯れる」ということわざは、リーダーが腐れば組織も枯れる、という戒めです。しかし逆に言えば、リーダーが真摯であれば、組織にも誠実さが育まれるということでもあります。

中越高校の本田監督のように、言葉に責任を持ち、他者への敬意を忘れず、真摯さを貫く──そんなリーダーがいるチームには、自然と温かく、強い精神が根づいていくのだと感じました。

 

組織の精神はトップから生まれる。
この言葉を、私たちの日々の仕事の中でも忘れずにいたいものです。