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消防設備士と防災士の違い~「防災屋」と呼ばれる理由と本当の役割

はじめに

「消防設備士さんは防災のプロなんですよね?」「防災士と同じ資格なんですか?」

現場ではこうした質問をいただくことがよくあります。

 

しかし、実はこの2つの資格、役割も専門知識も大きく異なります。

 

今回は、混同されがちな「消防設備士」と「防災士」の違い、そして“防災屋”と呼ばれることによる誤解、さらに私たち消防設備士が本当に得意なこと・そうでないことについて、率直にお話しします。


「防災屋」と呼ばれる理由

私たち消防設備士は、建物や施設の消防設備(消火器・火災報知器・スプリンクラーなど)の点検や工事を行う仕事をしています。

そのため、現場やお客様からは「防災屋さん」と呼ばれることが多くあります。

この呼び名には、「防災全般を何でも知っている人」というイメージが含まれていることも少なくありません。

 

しかし、「防災屋」という言葉はあくまで業界や日常会話で使われる俗称で、正式な資格名ではありません。

こうした呼び方が、「防災屋=防災士」と誤解される一因にもなっています。


消防設備士とは?(国家資格)

消防設備士は、消防法に基づく国家資格です。

主な仕事は、建物に設置されている消防設備の設計・施工・点検・整備など、設備に関する知識と技術を活かして“建物の安全”を守ることです。

たとえば、

  • 消火器や火災報知器、スプリンクラーなどの設置や交換
  • 法令に基づいた定期点検や修理
  • 消防署や行政への報告書類作成

などが、日々の主な業務です。

消防設備士には「甲種」「乙種」、そして第1類~第7類まで区分があり、それぞれ扱える設備の種類が異なります。


防災士とは?(民間資格)

防災士は、日本防災士機構が認定する民間資格です。

地域や企業、学校での防災教育や、災害時の避難誘導、啓発活動など、“人を守る”ためのリーダー的存在として幅広く活動します。

たとえば、

  • 地域住民や職場、学校での防災訓練や啓発
  • 災害発生時の避難誘導や応急対応
  • 家庭向けの防災アドバイスや備蓄の普及活動

などが防災士の主な役割です。

医師・看護師・教員・会社員・主婦・学生など、さまざまな立場の方が取得しているのも特徴です。


消防設備士が本当に詳しいこと・そうでないこと

ここで、特に伝えたいポイントがあります。

消防設備士は消火器・火災報知器・スプリンクラーなどの消防設備や消防法に関する知識・技術は豊富です。

 

しかし、地震・台風・水害などの“自然災害”に対する予測や避難行動、家庭での備蓄のアドバイスなどには詳しくありません。

つまり、

  • 「防災屋さんだから地震対策も全部分かるんでしょ?」
  • 「台風が来たときの避難方法も教えて!」

と言われても、私たちは設備の専門家であり、自然災害全般の専門家ではないのです。

自然災害への具体的な対策や実践的な知識については、防災士や自治体の防災担当者のほうが専門的です。

それぞれの専門家が、その分野で役割を持っています。


消防設備士と防災士の違い・比較

 

消防設備士

防災士

資格の種類 国家資格 民間資格
得意分野 消防設備の工事・点検 自然災害への備え・防災啓発
法的義務 消防法で義務付け 任意取得(義務なし)
活動範囲 建物・施設の設備管理

地域・家庭の防災活動


おわりに

「防災屋」と呼ばれることで、消防設備士と防災士が混同されることは少なくありません。

ですが、実際には資格も専門知識も役割も大きく異なります。

 

もし建物の消防設備に関するご相談があれば、どうぞ「消防設備士」までご連絡ください。

自然災害への備えや避難に関するアドバイスは、「防災士」や「自治体の防災担当者」が力になります。

 

それぞれの専門家の知識を活用し、安全・安心な暮らしを目指しましょう。