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防火設備定期点検(新潟市西蒲区|ホテル)

「消防設備点検と一緒じゃないの?」「いつも防火戸・シャッターテストしていたよね?」お客様からのご質問を賜る機会の多い「防火設備定期報告制度」我々業者からしてもややこしい制度で。消防法と建築基準法の狭間で改正された制度です。

 

平成28年に建築基準法の定期報告制度強化に伴い、特定建築物の定期調査報告で実施していた調査項目のうち防火戸・シャッター等の防火設備の作動や動作に係る機械的部分については特定建築物の調査項目から外した新たな報告制度です。

 

端的に申し上げれば、防火戸・シャッターが機械的に正常に機能しているのか?を試験をして報告する制度です。これまでは紙面だけの報告に留まっていたと言っても過言ではありません。

 

 この法改正の背景には、平成25年福岡市にある診療施設での火災により死傷者が発生する被害がありました。地域に親しまれ、評判の高かった病院で、入院患者ら10人が一酸化炭素中毒で死亡した。ニュースや新聞報道だけでなく、防災コンサルタントやコメンテーターも一様に医院に対する過失を指摘、防火戸設置状況の不備と初期対応の遅れ、火災原因である加温器のメンテナンス不備、この3点にクローズアップして様々な情報が錯綜していた。医院の過失責任だけを問い質すのかと疑念を持たずにはいられませんでした。

 防火戸の設置状況の不備について、院長は火災の前々日に、防火戸が閉まるのを手動で確認していたという。このような確認作業を実施していたことは非常に誠実な対応であったと思われます。しかし、実際には7つあった防火戸が全て作動しなかった。約3年前の建物増築に伴い新式に替える義務があったという。

 

報道では、防火戸が作動していれば煙の流入を遅らせて避難時間を確保出来たのだとありますが、この防火戸は、温度ヒューズ熔融により周囲温度72℃以上にならないと作動しない方式ですから、作動するまでに煙の流入は避けられません。例え作動したとしてもすでに一酸化炭素の充満した空間を閉鎖するような形になったと類推出来ます。

 

新式の防火戸であれば煙を感知して作動する為、煙の流入を避けられたと言えますが、「新式に替える義務があった」とされる行政指導は適性に行われていたのだろうか?という点です。そして、消防局は事前の査察でチェックして問題なかったと報告されています。行政指導は院長に伝わっていたのか?しかし、消防から問題なしとの指導を受けていたので、本当に知らなかったのではないか?このようなことから私は、防火戸の設置状況不備は、行政指導と法整備の欠如により発生したと思いました。

 

 報道の指摘の中で「初期対応の遅れ」とありました。しかし、当直の女性看護師は午前2時22分頃、火災に気付き建物外のタクシー運転手に通報を依頼、通報から6分後には消防が到着していた。出火当時、院内には18人がいたが、この火災で、いずれも70~80歳代の入院患者の8人と、同医院3階に住んでいた前院長夫妻2人の計10人が死亡した。その他、入院患者3人、医療関係者の女性2人の計5人が負傷、残り3人は自力で脱出した。

 

 

紙面に初期消火活動と避難活動がなされていないことを指摘していましたが、消防到着後、消火活動に2時間も要した大火災を女性看護師が初期消火する事や避難活動することが現実的な対応なのだろうか?また、助かった方は全て自力で脱出したのであり、消防署員ですら救助出来なかったという現場において初期の消防通報以外に手段は無かったと言えます。簡単に初期消火・避難誘導の遅れを指摘していましたが、看護師ですら助からない恐れのある凄惨な現場であったことからマスメディアも安易な指摘を控えてもらいたいと考えさせられた一面です。

 

「防火設備定期点検報告」は、特定建築物定期調査報告対象となる建築物の防火シャッター・防火戸・防火スクリーン・ドレンチャー設備の点検報告を1年に1回、各市町村の建築指導課等が窓口となっております。

 

自動火災報知設備の火災受信機との連携も多い設備なので消防設備士にとっても関わりの多い分野でもあります。設置されている設備が有事の際に正常に作動していれば人命が助かるケースは多くございます。参考にして頂けると幸いです。