介護施設の運営において、消防設備の点検は欠かせない法定業務のひとつです。
とはいえ、「いつ点検すればいいのか分からない」「報告期限をうっかり忘れてしまった」といった悩みもよく聞かれます。
この記事では、消防設備点検の年間スケジュールの基本と、現場で管理すべき注意点をわかりやすく解説します。
消防設備点検は「年2回」が基本
消防設備点検は、消防法第17条によりすべての防火対象物に義務付けられており、点検は次の2種類があります。
点検の種類 | 内容 | 実施頻度 |
機器点検 | 外観や機能の確認(目視・操作) | 6か月に1回以上 |
総合点検 | 実際に作動させて機能を確認 | 1年に1回以上 |
介護施設ではこの両方を行う必要があり、年に最低2回の点検が必要です。
また、これらの結果を定期報告として消防署へ提出する義務があります(報告頻度は施設の規模や用途により異なる)。
年間スケジュールの基本例(介護施設向け)
以下は、一般的な介護施設で使える消防点検の年間スケジュール例です。
🔸1回目(春):機器点検+総合点検(報告用)
- 実施時期:4月~6月
- 内容:全設備の作動確認・機器清掃・報告書作成
- 目的:消防署への定期報告に対応
🔸2回目(秋):機器点検
- 実施時期:10月~12月
- 内容:点検資格者による目視・操作確認
- 目的:設備の中間チェック・不具合の早期発見
このように、春と秋の年2回に点検を分けておくと、計画的かつ忘れにくい運用が可能になります。
点検対象となる主な設備
介護施設で点検の対象になる主な消防設備は次の通りです
- 自動火災報知設備(感知器・受信機など)
- 誘導灯・誘導標識
- 消火器・スプリンクラー設備
- 非常警報設備・非常放送設備
- 火災通報装置
- 避難器具(滑り台・救助袋など)
- 非常コンセント設備
これらの点検内容や方法は、それぞれの設備の構造や機能によって異なるため、専門資格を持つ業者に依頼することが一般的です。
点検業務でよくあるミスと注意点
消防点検では、次のような現場での“あるある”ミスが意外と多く見られます。
- 点検はしたが報告書を提出していなかった
消防署への報告が義務付けられている施設では、未報告は行政指導や指摘の対象になります。
- 担当者が変わってスケジュールが引き継がれていない
点検月や業者とのやり取りが曖昧になると、スケジュールがズレがちです。施設の年間予定表にあらかじめ組み込むと安心です。
- 点検はしているが、改善工事が放置されている
「点検=完了」ではなく、指摘内容に応じた修繕まで対応して初めて安全が保たれます。
点検をスムーズに行うための3つのポイント
①年間予定表に組み込む
行事予定や法定業務と併せて、「○月に点検」とあらかじめ明記しておくことで抜け漏れを防げます。
②点検結果の保管・共有
報告書や写真記録を施設内で管理し、引き継ぎの際もすぐ確認できる状態にしておくと便利です。
③設備の変化に気づく習慣を持つ
普段の業務中にも、「非常ベルが鳴らない」「誘導灯が消えている」などの異常に気づける体制を整えましょう。
プラスアルファで意識しておきたいこと
消防設備点検と同じタイミングで、照明の不具合やナースコールの異常など、日常的に使用している設備の確認もあわせて行うと効率的です。
例えば:
- 誘導灯のランプが切れている
- 廊下の照明がチカチカしている
- ナースコールの一部が反応しない
こうした不具合は、消防設備とは別扱いですが、非常時の避難に支障が出る可能性があるため、総合的な確認が理想的です。
まとめ|「点検スケジュールの見える化」が鍵
消防設備点検は、ただの義務ではなく、入所者と職員の命を守るための“安全装置”のメンテナンスです。
そのためには、「いつ・何を・誰が」行うのかを明確にし、定期的な見直しを続けていくことが不可欠です。
日々の業務に追われる中でも、年間スケジュールに組み込み、「施設全体で点検体制を支える仕組みづくり」を意識してみてください。