介護施設では、消防設備点検の実施が義務付けられており、点検後には「点検結果報告書」を作成・提出する必要があります。
しかし実際には、「どんな書類をどうやって出せばいいのか分からない」「業者に頼めば終わると思っていた」という声も多く聞かれます。
この記事では、消防点検報告書の記載内容・提出の流れ・施設側の記入箇所について、現場目線でわかりやすく解説します。
消防点検報告書とは?目的と必要性
消防設備点検の結果は、「消防用設備等点検結果報告書」として所轄の消防署へ提出します。
この報告は、消防法第17条に基づく法定業務であり、施設の防災体制が機能していることを行政に伝える重要な役割を持っています。
特に、介護施設のように避難困難者が多く集まる建物は「特定防火対象物」とされており、原則として年1回の報告提出が義務付けられています。
報告書は誰が作成する?
多くの場合、報告書は点検を担当した消防設備業者が記載・作成します。
報告対象の設備やその点検結果を専門的に記録し、必要な様式(表紙・点検票など)に沿って整えるのが一般的です。
ただし、報告書には一部、施設側で記入しなければならない項目があります。
施設側で記入が必要な署名欄
報告書の中には、次の3つの署名欄があります。
これらは業者ではなく、施設の担当者や責任者が記入するのが通例です。
🔸 届出者欄
- 提出者となる管理者(施設長など)の氏名・住所・電話番号
- 提出責任を負う人として記載します
🔸 防火管理者欄
- 防火管理者として消防署に届出済みの職員名を記入します
- 多くの施設では防火管理者講習修了者が担当
🔸 立会者欄
- 点検当日に現場に立ち会った職員の氏名を記入
- 日常の業務を知っているスタッフが記入するケースが多いです
これらの記入が完了した状態で、消防署へ提出することで報告が成立します。
つまり、報告書は業者だけでなくお客様との共同作業で仕上げるものだという点が重要です。
提出の方法とタイミング
報告書は、所轄の消防署(建物の所在地を管轄する)に提出します。
提出手段 | 備考 |
持参提出 | 一部の自治体では必須(署での受付印が押される) |
郵送提出 | 記録が残る方法(簡易書留など)がおすすめ |
電子提出 | 一部の市町村で運用中(対応状況は要確認) |
提出期限は原則として点検実施日から30日以内が推奨されており、施設の報告義務に該当するかどうかの判断も含め、点検実施前に業者と共有しておくことが大切です。
報告書の構成と主な記載内容
報告書は主に以下の構成になっています
1. 表紙(消防用設備等点検結果報告書)
- 建物の概要(名称・住所・用途・構造など)
- 点検種別(機器点検・総合点検)
- 点検日・業者情報・署名欄
2. 点検票(設備ごとに細分化)
- 感知器、受信機、非常ベル、誘導灯など
- 各設備が「正常」「要是正」「未設置」などで評価される
不備や改善が必要な項目があれば、改善予定欄に記入し、消防署に報告します。
よくある記入ミスと注意点
報告書を提出する際、次のようなミスが原因で再提出になるケースがあります:
- 建物名称・用途が実態と異なる
- 届出者や防火管理者の署名が未記入のまま
- 点検票に設備が抜けている/報告に漏れがある
- 是正事項に対する対応方針が空欄
- 提出期限を過ぎてしまっている
報告書の完成後、業者からの説明を受け、必ず内容を確認してから提出する習慣を持つと、こうしたミスを防ぐことができます。
保管義務と記録の扱い
提出後も、報告書の控えは施設内にて保管する義務または強く推奨されています。
- 保管期間:3年間が目安(自治体によって異なる)
- 保管方法:ファイル化して職員間で共有、または防火管理者用の台帳へ整理
- 職員の異動時にも引き継げるよう、定位置での保管を推奨
報告書作成を“気づき”の機会に
点検報告書は「法令対応」のための書類ではありますが、同時に「施設の安全状況を振り返る資料」でもあります。
例えば報告書作成の過程で以下のような気づきが生まれることがあります:
- 点検済みでも、誘導灯が点灯していなかった
- 消火器の期限が迫っていた
- 火災通報装置の音量が小さく気づかれにくい
- ナースコールや照明の不具合が避難誘導に影響しそうだった
こうした現場の気づきは、次回点検や設備更新に役立つ貴重な情報です。
報告書を「提出して終わり」にせず、ぜひ施設全体の防災意識向上に活用していきましょう。
まとめ
消防設備点検報告書は、施設の防災体制を「見える化」するための重要な書類です。
業者が多くの内容を記載してくれますが、届出者・防火管理者・立会者の署名は、施設側の責任として対応すべき部分です。
報告書をしっかり管理・保管し、次回以降の点検にも活かすことで、介護施設の安全性はより確実なものになります。
点検は終わっているのに、報告書が未提出だった…。
そんな事態を防ぐために、今一度報告体制を見直してみませんか?