介護施設では、高齢者が安心して過ごせる環境づくりの一環として、消防設備の整備と定期点検が法令で義務付けられています。
その中でも特に身近な設備である「消火器」や「誘導灯」は、設置してあるだけでは不十分で、一定の期間が過ぎたら“交換”が必要です。
今回は、介護施設で多く使われるこれらの設備について、交換のタイミング・法令で定められた基準・点検と交換の違いなどを解説します。
消火器の交換目安と設置基準
🔶 消火器の種類と基本的な設置義務
介護施設では、以下のような消火器が使用されています:
- 粉末ABC消火器(一般的)
- 強化液消火器(厨房や電気設備付近)
- 二酸化炭素消火器(精密機器周辺)
建物の延べ面積や用途に応じて、消防法施行令により設置基準が定められており、適切な本数と場所に設置する必要があります。
🔶 消火器の有効期限と交換目安
- 本体(筒部分)の耐用年数:10年が目安
- 薬剤の詰め替え:おおむね5年ごと(型式により異なる)
点検で異常がなかったとしても、経年劣化により突然使用できなくなる可能性があるため、期限を迎えたら交換が基本です。
誘導灯の交換目安と設置基準
🔶 誘導灯の設置目的
誘導灯は、災害や停電が発生した際に避難経路を視覚的に示す設備で、以下のような場所に設置されています:
- 出入口や非常口の上部
- 廊下・階段の曲がり角付近
- 客室や居室の外に面する通路など
🔶 誘導灯の部品交換と本体交換
誘導灯は以下の2つのタイミングで交換が必要です:
交換対象 |
目安 |
備考 |
バッテリー(内蔵蓄電池) | 約4~6年 | 点検で劣化が確認された場合、早期交換が推奨されます |
本体(器具全体) | 約10年 | 機器寿命による交換。LEDタイプでも長期使用は劣化リスクあり |
LEDタイプは「切れにくい」ですが、バッテリー切れや基盤劣化で点灯しなくなるケースもあるため、定期点検時に状態を確認することが重要です。
点検と交換の違い|「異常なし=安心」ではない
消防設備には「点検」と「交換」がありますが、この2つは役割が異なります。
区分 | 内容 | 誤解されやすいポイント |
点検 | 現在の動作状態を確認 | 外見上異常がなくても、内部劣化は見逃しがち |
交換 |
部品や本体を新しいものに入れ替える | 点検で異常がないと、交換の必要性が見落とされやすい |
施設の設備一覧表などに「設置年・交換年」の記録を残しておくことで、点検の際に判断しやすくなります。
よくある現場の疑問とヒント
「点検のときに交換もお願いできるの?」
→ 基本的には別作業になりますが、事前に相談すれば同時対応が可能な業者も多いです。施設側の負担軽減にもつながります。
「使用していない消火器も交換するの?」
→ はい。使用有無に関わらず、経年劣化は進むため、期限管理が必要です。
「点検は通ったけど、交換は必要?」
→ 点検で異常が出なくても、「製造から10年」が経過している場合は予防的な交換が推奨されます。
まとめ|“安心”は設置だけでなく、更新で守る
介護施設では、消火器や誘導灯のような基本的な消防設備が確実に使える状態であることが入居者の命を守る前提です。
しかし、「あるだけ」では不十分で、点検と交換の両方がバランスよく行われることが大切です。
- 定期点検で動作確認
- 期限管理で交換対応
- 施設全体で記録・計画の共有
この3つを意識することで、もしものときにも安心できる防災体制を築くことができます。