介護福祉施設では、消防設備の設置と点検が義務付けられているものの、「きちんと点検していたのに、いざというとき作動しなかった」というケースも少なくありません。
高齢者の命を守る現場だからこそ、設備が“いつも通り動く”状態を保つことが何より大切です。
この記事では、介護施設で実際に見られる消防設備の不具合とその原因・対処のヒントを、現場目線で解説します。
よくある消防設備の不具合とは?
1. 感知器が作動しない・誤作動する
【原因例】
- ホコリや蜘蛛の巣の付着で誤検知
- 周辺環境の温度変化や湿気の影響
- 長期間清掃・交換されていない旧型機器
【対処ポイント】
- 点検時に外観清掃・感度確認を実施
- 周辺環境に応じた感知器の種類に変更することも有効
2. 非常ベルや非常放送が鳴らない
【原因例】
- 配線の断線や接触不良
- バッテリーの劣化
- 操作盤の設定ミスや故障
【対処ポイント】
- 定期的な実動テスト(実際に鳴らして確認)
- 交換から10年を超える機器は寿命を意識
3. 誘導灯が点灯しない・点滅する
【原因例】
- 蓄電池の劣化(4〜6年が目安)
- 安定器や内部基盤の故障
- LEDでも経年劣化で光量が低下
【対処ポイント】
- バッテリー試験を行い、早期交換を検討
- 点滅や暗さは劣化のサイン。放置せず記録・報告
4. 消火器の圧力低下・ラベル剥がれ
【原因例】
- 経年劣化・使用期限切れ
- 湿気や直射日光での腐食・サビ
- 落下や衝撃による変形
【対処ポイント】
- 設置年や使用期限を見える場所に明記
- 定期点検時に外観・圧力ゲージを確認
5. 火災通報装置が作動しない
【原因例】
- 通信回線の断線・故障
- 端末のバッテリー切れ
- 操作ミスや接続不良
【対処ポイント】
- 定期的に消防署との通報訓練を実施(事前連絡必須)
- 通報後の復旧操作も併せて確認しておく
不具合の背景にある“施設ならでは”の事情
介護福祉施設には、次のような特徴があり、消防設備の不具合が見逃されやすい傾向があります。
- 入居者優先で設備の“音出し”が避けられる
- 夜間は職員数が少なく、設備異常の気づきが遅れがち
- ナースコールや電気設備など、複数の配線が交錯しており、トラブルが連動しやすい
- 点検時に「異常なし」とされても、実際の使用状況では問題が出ることもある
そのため、「定期点検だけでなく、日常的なチェックの目」が重要です。
不具合を未然に防ぐための習慣とは?
不具合を防ぐには、点検業者任せにせず、施設側でも「気づける仕組み」を作ることが有効です。
✅ 日常点検チェックリストの活用
- 点灯・点滅・音鳴りを定期的に確認
- 清掃や物品の配置で、感知器の周囲を塞いでいないか確認
✅ 記録の“見える化”
- 不具合や交換履歴を、施設内で共有できるように台帳化
- 担当者が異動しても対応状況が追えるようにする
✅ 設備の使用練習
- 通報装置や非常放送の操作を、実際に職員が触れて覚える機会を作る
- 「万が一」を「慌てず対応」に変えるには、実機確認が一番の近道
点検と合わせて意識したい+αの視点
消防設備以外にも、以下のような設備が“避難や通報”に影響する可能性があります:
- 廊下の照明(暗い・点滅)
- ナースコールの反応不良
- 電源の入り切りが不安定な非常灯
こうした設備は「消防設備」に含まれないものの、火災時の避難行動に直結する重要なインフラです。
点検のついでに、こうした設備にも目を向けると、より安全な環境づくりに役立ちます。
まとめ|“異常がない”ではなく“気づける”体制へ
消防設備の不具合は、音が鳴らない・光らないといった目に見える不調のほか、見えにくい“静かな劣化”として現れることもあります。
だからこそ、「点検を受けているから安心」ではなく、点検+日常の気づき+職員の理解の3つが揃って、はじめて安全が守られます。
現場のひと声や、ふとした違和感が、命を守る備えにつながることもあります。
ぜひ、職員全員で「気づける施設づくり」を意識してみてください。