【はじめに】 防火管理者さま、消防設備の維持管理に日々ご尽力いただき、誠にありがとうございます。
今回は、ある倉庫で発生した「断線警報」の事例をご紹介します。警報が出たのに、いざ現場で点検しても異常が見つからない……そんな不思議な状況に、現場は一時混乱。しかし、その原因は「とても身近なこと」でした。
本記事では、実際の現場での調査経緯と原因の特定、そして再発防止のためにできることをわかりやすくご紹介します。防火管理者さまにとっても、同様の症状への対応力が高まる内容になっております。
【事例:倉庫内での断線警報→消灯の謎】 ある夏の日、弊社に以下のような連絡が入りました:
「倉庫内の受信機が断線警報を出したが、すぐに消えた。その後も警報は発生せず、機器の動作にも異常はないようだ」
現場は金属屋根の折板構造の倉庫。夏場は屋内の温度が非常に高くなることでも知られていました。
【調査内容】 弊社技術スタッフが以下の点検を実施:
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配線の絶縁抵抗測定:異常なし
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終端抵抗(10kΩ)の測定:正常
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熱感知器の加熱試験:正常動作
この時点では「異常なし」と判断されるような結果ばかり。しかし、その後感知器のヘッドを1つずつ外して目視点検したところ、ある“異変”が……。
【原因の正体:配線の経年劣化】 確認できたのは、感知器ベースに接続された配線の被覆が劣化し、銅線の一部が酸化・黒化していたこと。
このような状態になると、日中の温度変化や微細な振動などにより、電気的に「接続・非接続」を繰り返す状態になります。つまり、受信機から見れば一瞬だけ電流が流れなくなり「断線」と判断して警報を発しますが、その後すぐ復帰して警報が消えるという挙動を示していたのです。
【なぜ起きたのか?】
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折板屋根の下は、日中50℃を超える環境になることも。
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感知器ベース周辺の配線が熱や振動で収縮・膨張を繰り返す
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長年使用された配線の素線が疲労・破断しかけていた
この3つが重なり、「断線警報→自然復旧」という一見不思議な現象が起きていたのです。
【再発防止のためにできること】 同様の症状を防ぐには、以下の点にご注意ください:
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高温環境の感知器配線は定期的な点検・交換を → 被覆の硬化や素線の劣化が見られる前に対処
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感知器ベースや端子部の締付状態を確認 → 特に振動がある環境では緩みやすい
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配線ルートを工夫して熱源から離す → 折板屋根直下には断熱板や保護チューブの設置も有効
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異常が再現しない場合も“目視確認”を徹底 → 計測器で異常が出なくても、劣化は目で見えることがあります
【まとめ】 今回のように、一見正常に見える設備でも、内部では小さなトラブルの兆候が潜んでいることがあります。弊社では、こうした事例にも丁寧に対応し、原因をしっかりと突き止めてから改善提案を行っております。
もし「最近、受信機が変な挙動をしている」「警報が出たけど、すぐ消えた」などの症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
現場を知り尽くしたスタッフが、分かりやすくご説明・対応いたします!




