トヨタ自動車の元社長・元会長である張富士夫さんの著書の中に、強く印象に残る話がありました。
トヨタでは「なぜを五回繰り返せ」という教えがよく知られていますが、それと同じくらい現場で徹底して叩き込まれた言葉があったそうです。それが「見たか。」という一言でした。
上司は何かあるたびに、「見たか」と問いかける。自分の目で現場を確かめずに意見を述べれば、厳しく叱られる。だからこそ張さんは、発言する前に必ず「自分は本当に見たのか」と自問する習慣が身についたといいます。その積み重ねが、やがてトヨタの経営の柱である「現地現物」の徹底へとつながり企業文化発展の経緯に触れました。
この話を読みながら、私たちの仕事を思い浮かべました。消防設備の仕事は、報告書や写真だけでは完結しません。受信機の盤の中を確認し、配線の納まりを見て、感知器の位置と周囲環境を確かめる。そこに違和感はないか、見落としていることはないかと、自分の目で確かめ続ける姿勢があってこそ、本当の意味での安全と品質が守られるのだと思います。
元請けとして任せていただく仕事が少しずつ増えてきた今、私たちはこれまで以上にお客様と直接向き合う立場になっています。だからこそ、判断の拠りどころは常に現場にあるという原点を忘れてはならないと感じています。
経験や勘も大切ですが、それ以上に大切なのは、実際に足を運び、自分の目で確かめることです。その地道な積み重ねが信頼を生み、やがて会社の力になっていくのだと思います。
「見たか。」という言葉は、誰かを責めるための言葉ではなく、自分自身を律するための問いでありたい。厳しさの中に相手を想う気持ちがあり、互いに高め合える関係があるからこそ、人も組織も成長していくのでしょう。
私たちもまた、一件一件の現場を大切にしながら、自分たちの目で確かめ、自分たちの言葉で説明できる仕事を積み重ねていきたいと思います。その先にこそ、目指す姿があると信じています。


