はじめに
先日、当社で自動火災報知設備の火災受信機の更新工事を行いました。
今回更新した受信機は、なんと1972年製。2026年の現在まで、実に50年以上現役で稼働していた機器です。
このブログでは、
- なぜこの工事が当社に依頼されたのか
- 実際にどんな工事を行ったのか
- 工事にどれくらいの費用がかかったのか
- そもそもなぜこの工事が必要なのか
という点を、これから同じような設備の更新を検討されている方、あるいは今まさに古い受信機の扱いに悩んでいる管理者様に向けて、できるだけ分かりやすくまとめたいと思います。
きっかけは「点検はできるけど、工事はできない業者」への不満
今回のご依頼は、お客様から「この古い設備を新しくしたいので、御社にお願いできないか」というご相談から始まりました。
当社としては工事をさせていただけるならありがたいお話でしたが、正直なところ「なぜうちに?」という疑問もありました。お話を伺うと、理由は既存の点検業者への不満でした。
点検の際に見積書の作成をお願いしても、「時間がかかる」とは言われるものの、具体的にいつまでにできるのかが答えられず、その場しのぎの曖昧な返事しかもらえなかったそうです。おそらくその業者では、見積書を作るのは営業部門か、あるいは下請けとして入っているために元請けへの確認が必要で、その場で即答できなかったのだと思われます。
実はこの業界、「点検はできるけれど工事はできない」という業者は決して珍しくありません。点検業務だけで消防設備士としてのキャリアを終える方も少なくない世界です。
点検で異常を見つけても、実際に工事をして直す力がなければ、お客様の不安は解消されません。今回はそんな中で、当社にチャンスが巡ってきた形になります。
図面がない、そこから始まった準備作業
いざ工事の計画を立てようとしたところ、竣工当初の火災受信機に関する図面が残っていませんでした。
そこで当社では、建物の平面図をもとに自動火災報知設備の設置位置を一つひとつ確認し、新たに図面を作成するところから作業をスタートしました。図面という土台がなければ、正確な工事計画も安全な施工も成り立ちません。地道な作業ですが、この工程を飛ばすことはできませんでした。
その後、お客様と打ち合わせを重ね、いよいよ工事本番を迎えました。
工事内容:4日間で2棟分をまとめて施工
今回の工事では、以下の機器を交換しました。
- 火災受信機:2台
- 感知器:約80個
- 非常ベル:6台
2棟分をまとめて施工するボリュームのある工事です。さらに今回は、火災受信機を現在の位置から、より使いやすい位置へ移設する工事も合わせて実施しました。
工期は4日間、スケジュールは以下の通りです。
【1日目】:受信機移設に伴う配線工事
【2日目】:受信機の移設工事、感知器・非常ベルの交換工事
【3日目】:感知器・非常ベルの交換工事、試験
【4日目】:移設に伴う壁の修繕など残作業
単に古い機器を新しいものに載せ替えるだけでなく、配線工事や移設、壁の補修まで含めた総合的な工事になりました。
施工前後の様子
【火災受信機】
【総合盤】
工事費用:約170万円
今回の工事費用は、約170万円でした。
火災受信機2台、感知器約80個、非常ベル6台の交換に加え、受信機の移設工事(配線工事・壁の修繕含む)まで含んだ内容での金額です。
「思ったより高い」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この金額が本当に高いのかどうかは、この後の「なぜこの工事が必要なのか」を読んでいただくと、見え方が変わってくるかと思います。
なぜこの工事が必要なのか:機器にも寿命がある
今回の工事が必要になった最大の理由は、機器の経年劣化です。
日本火災報知器工業会の基準では、火災受信機や非常ベルなどの推奨交換年数は約20年、感知器は約10~15年とされています。
今回の物件では、火災受信機がその2倍以上の年月を使用され続けていたことになります。
24時間365日、休まず働き続けている設備
自動火災報知設備は少し特殊な設備で、基本的には「火災が発生したときにしか本領を発揮しない」機器です。裏を返せば、ほとんどの設置期間中は、その性能をフルに発揮する機会がないまま役目を終えていく設備とも言えます。
しかし実際には、火災の有無を24時間365日休むことなく監視し続けており、機器には常に電気が流れ、内部の電子部品には常に負荷がかかり続けています。目立たないところで、静かに、しかし確実に劣化は進んでいるのです。
機器が壊れた瞬間から、火災を発見できなくなる
もし機器が故障してしまうと、その瞬間から建物内の火災監視ができなくなります。万が一その状態で火災が発生した場合、発見が遅れ、逃げ遅れによる最悪の事故につながる可能性も否定できません。
「うちは火を扱う業種じゃないから大丈夫」と思われる方もいらっしゃいますが、それは誤解です。火災の原因として、コンセント周りなどの電気火災はかなりの割合を占めると言われています。火の気がない場所でも、火災のリスクは意外と身近に潜んでいるのです。
設備投資と、火災による損失を比べてみる
たしかに、自動火災報知設備の更新工事には、設備投資としてまとまった金額がかかります。
今回のように170万円規模になることも珍しくありません。
しかし、もし設備投資を惜しんだ結果、火災が発生し人的な被害が出てしまった場合はどうでしょうか。専門的な賠償額の算定は弁護士の領域になるため詳しくは分かりかねますが、想定される損害賠償額は数億円規模になるとも言われています。単純計算でも、工事費用の100倍以上の損失につながる可能性があるということです。
消防設備は、いわば「実態のある自賠責保険」のようなものだと考えています。
正直なところ、消防設備は日常生活を便利にしたり、豊かにしてくれたりするものではありません。普段は目立たず、動くこともなく、コストだけがかかる存在に見えるかもしれません。
しかし、「万が一」が起きたときに、そこにいる人の命を守れるかどうかは、この設備が正常に機能するかどうかにかかっています。
おわりに
今回の工事は、1972年製という長年活躍してきた火災受信機からのバトンタッチでした。
50年以上頑張ってきた機器に敬意を払いつつ、これから先の安全を新しい機器に託す、そんな工事だったと思います。
もし、
- 設置してから長い年数が経過した火災受信機がある
- 点検業者に見積もりを依頼しても、なかなか具体的な返答がもらえない
- 図面が残っておらず、設備の全体像が分からない
このような状況に心当たりがある方は、一度当社までご相談ください。
図面の作成から工事まで、一貫して対応いたします。










